底辺男の人生エピソードを語っていくシリーズ、9話目になります。
今回は、自分が底辺だと自覚している人には、耳が痛い話になるのかもしれません。
人間だれしも歳を取ります。
大金持ちも、底辺でも時間の流れは同じなんです。
人生のどこかで底辺から抜け出さない限り
若い底辺男も歳を取り、中年の底辺に、そして老人の底辺になっていきます。
また、歳を取って老後に底辺に転がり落ちる人もいます。
今回の主人公の熊田さん(仮名)は年齢が70歳(当時)
筋金入りの底辺で、職を転々としながら、その日暮らしをする生活で
貯金無し!住む場所無し!年金無し!
という三拍子そろったご老人でした。
一番痛いのは、若い時から年金を掛けておらず
もらえる年齢になっても、びた一文、年金をもらっていませんでした。
そんな熊田さんの最期のストーリーをお届けします。
住み込みのガテン系の仕事
熊田さんとは約30年前に土方の仕事をしている時に会いました。
僕の友人が土方の仕事をやっていたので、そのツテで働かせてもらっていまいた。
熊田さんは年齢も年齢なので重労働は避け、雑用などを主な仕事としてやっていました。
無口で、どんな仕事も嫌な顔を一つせずに黙々と仕事をする人で
初めて会った時は、怖い印象だったけど、だんだん打ち解けて喋るようになっていきました。
その仕事場での印象は凄く良いんですが
熊田さんの過去は散々なもので、いろいろな職場を転々として
住所も定まらないような生活をしていたそうです。
仕事は土方系で住み込みが出来るところを転々とする生活。
現代で言うと、派遣や期間工を転々とする人と同じような感じですよね。
当時の僕は、まだ10代だったので
熊田さんと僕の人生をダブらせて考えることもしませんでしたが
ふと、最近、熊田さんの事を思い出した時
「熊田さんって俺の人生と似てるな・・」
と微妙な気持ちになりました。
というのも、熊田さんの最期を知っているからです。
底辺老人の熊田さんは幸せだったのか?
昼休みに、道路の歩道で弁当を広げて皆んなで食べていると、前に女性が通りがけます
「お姉さん、何処行くの〜?」
熊田さんや僕も一緒になって女性をからかったりしたり
グラビアアイドルが沢山掲載された週刊誌を皆で眺めながら
「どの女が好みダー?」
などと、くだらない話題で盛り上がっていました。
いまだに覚えているのは、熊田さんは豊満な女性が好みだってこと、
そんなところも僕にそっくりです(笑)
そんな、何気ない日常を繰り返していたのですが
熊田さんが突然、仕事を休みます。
どんなに体調が悪くても仕事にはかならず来ていて
いままで熊田さんが休んだところは見たことがありません。
なんか、嫌な予感がしました。
その次の日も休みました。
そして、その次の日も・・。
社長が熊田さんの様子を見にアパートに行きました。
熊田さんは、布団に横たわりながら苦しんでいたそうです。
そのまま、社長が病院に連れていきます。
検査の結果、かなり進行している癌が見つかりました。
今思えば、熊田さんが休むずいぶん前から顔色が悪く
時折、苦しい表情をしていたように思います。
僕らには痛がった表情を見せたり、弱音を吐いたりはしなかったけど
きっと、かなりキツかったのではないでしょうか。
ここからは社長や、熊田さんのお姉さんから聞いた話になります。
貯金も無いし、仕事を休んだら生活していけなくなるから
何か身体がおかしいと思っても、痛くなっても、我慢して仕事に行ったそうです。
おそらく癌ではないかな、と覚悟はしていたそうです。
それから、何回か病院にお見舞いに行きましたが、
入院してから1ヶ月もしないくらいで亡くなってしまいました。
熊田さんのお姉さんが言うには、
熊田さんの若い時は、本当にハチャメチャな人生で
今回の癌で入院するまで家族の縁を切っていたそうです。
でも、最期に、僕たち仕事仲間に囲まれて
励まされて、看病されて、助けられている熊田さんを見て驚いていました。
とても昔の熊田さんでは想像もつかない・・
「どんだけワルだったんだよ・・」
その後、みんなで飲みながら熊田さんの話題になると
あれこれ、妄想を膨らませていました。
底辺の老後はどうなるのか!?
底辺の生活を続けていくと、最期(老後)はどうなるのだろう?
まだ若い人はそんなこと考えないかもしれませんが
僕くらいの年齢(48歳)になるとしごく現実的な疑問になります。
熊田さんが、良い例になるのか、悪い例になるのかはわかりません。
当時は気付かなかったけど、熊田さんは底辺の人生について考えるきっかけを与えてくれました。
・病院に行くお金もない
・仕事を休んだら生活できない
・家族と絶縁
・仕事を辞めたら住む場所がない
こうならないための努力を一歩一歩していかなくてはいけないな、と思いました。
底辺から脱出しましょう!
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